■付着藻類調査
付着藻類とは、河川や湿原、湖の岸辺の底質、大型水生植物などの表面に付着して底生生活をする藻類のことです。川に入ると、石の表面がヌルヌルしていて滑りやすかったり、石を持ち上げると緑色の藻類が張り付いていたりしませんか?それらが、付着藻類と呼ばれるものです。河川では、水底にある石礫や砂利に付着している藻類を示しますが、池沼や湖では、水辺や泥上、水草の上などに付着している藻類を指します。その他に、水田や池沼などの湿土上や、河岸の湿岩上などに付着している藻類を指す場合もあります。
私達が付着藻類調査を実施する水域は、河川域が多く、そこでは主に藍藻類、珪藻類、緑藻類などが確認されます。群体や糸状体を形成している種や単細胞の種など、生活の様子は多様です。
藻類の動態には、地域特性や季節的な変化だけでなく、流量や水質などの環境による変化があります。一般的に藻類の現存量は、春から秋にかけて多くなりますが、各河川によって量的・質的な変動が異なります。
藻類相を把握するには、水温や流量の変化を考慮して、少なくとも季節ごとに調査を実施することが望ましいです。一般的に、藻類が剥離されるような出水後には、夏場で1週間〜10日間程度で藻類相が回復すると言われているため、実施日は出水後を避けて、平常流量時を選びます。そのほかに、水温や流量、水質などの変化と合わせてモニタリングを行う場合は、それらの調査頻度等を考慮して調査を実施します。例えば、出水後などに藻類の回復の様子を把握する場合は、週に2〜3回、2週間〜1ヵ月間程度続けて調査を実施します。
調査方法には、定量的な調査と定性的な調査があります。環境調査の場合はほとんどが定量的な調査を実施したうえで、必要に応じて適宜、定性的にも採取しています。現存量や藻類相だけでなく、近赤外線写真の画像処理によるクロロフィルa量の推定などにより藻類の活性度を計測する方法もあります。また、アユの食み跡を潜水観察などにより確認し、アユの生息状況を推定する調査や、環境省の絶滅危惧種などに指定されているチスジノリやカワモズクなどに着目した貴重種の生育状況調査などもあります。
アユはみあと
水中撮影
■定量的な調査
河川域では、一般的に石礫の表面を剥ぎ落とす方法が用いられています。河床の礫の平面的な部分に、5cm×5cmの方形枠を石礫にあて、ブラシを用いて、枠外の付着物を落としてから、枠内の付着物を剥ぎ落としてサンプルとします。一般的には、代表的な石礫を5個選びますが、清流などで藻類の総量が少ない場合などは適宜採集面積を増やします。池沼や湖では、岸辺の水生植物帯から単位面積あたりの付着物の採取する方法や、人工的な付着盤を沈めておき、一定期間毎に引き上げて採取する方法があります。
■定性的な調査
代表的な場所以外でも、糸状体緑藻などの繁茂がみられる場合には、定性的に採取する場合があります。
■室内分析
採取したサンプルを、現地で中性ホルマリンを用いて固定します。室内に持ち帰り、試料中の生物量により濃縮又は希釈して検鏡します。濃縮方法は、静置沈殿や遠心沈殿法などがあります。
■調査道具
調査には、方形枠(コドラート5cm×5cm)、ナイロンもしくはカネブラシ、小型バット、サンプル容器、洗ビンなどを用います。現地の水には藻類が含まれる可能性があるため、採取した石礫を洗う際、サンプルを希釈する際などには、現地の水を使用するのではなく、水道水を使用します。